国語教育史学会

第8回例会(国語教育史研究会)

日 時 1999年11月13日(土) 2:00〜5:00 早稲田大学14号館807室
題 目 研 究

戦前・戦時下における古典教材の問題(1) −『サクラ読本』の源氏物語教材をめぐって−
  岩崎 淳(学習院中等科)

資料紹介

社会科より見た国語科単元学習批判 向山嘉章『カリキュラム中心問題としての単元の研究』
  黒川 孝広(吉祥女子中学・高等学校)

参加者 浅見優子、岩崎淳、牛山恵、内田剛、大平浩哉、大屋敷全、小原俊、北林敬、喜多見眞弓、熊谷芳郎、黒川孝広、小林塑青、坂口京子、高木まさき、田近洵一、山下勇人
戦前・戦時下における古典教材の問題(1) −『サクラ読本』の源氏物語教材をめぐって−  岩崎 淳
発表内容  『サクラ読本』から教科書に「源氏物語」が掲載され、国語教育者の間では歓迎の声が多かった。しかし、橘純一は「源氏物語」を不敬であるとし、削除を求めた。それに対して井上赳はその必要性を説いて、一部作品の差し替えのみで存続させることができた。
 その反対を唱えた橘純一は、ただ反対を説いたのではなく、「源氏物語」を詳細に分析し、その結果教材に不適であると指摘した。その論に対して必要を訴えた人々は真正面から応えていなかった。ここから、「源氏物語」という作品の名前だけで、教材として扱い、どの部分の内容が教材に適しているかなどの分析がおそろかになっていることがわかる。現在の古典教育でも作品名でよい作品であると判断し、その中身を十分に吟味しないで教材としていることがあるのではないか。それが、今日の古典教育の不振につながっているものと思われる。
(まとめ 黒川孝広)
資料目次 (資料1)『サクラ読本』巻十一(六年用)第四 源氏物語
(資料2)『サクラ読本』編纂趣意書
(資料3)源氏物語教材に関する論議
(資料4)橘純一
(資料5)雑誌「国語解釈」
(資料6)橘純一「小学国語読本巻十一「源氏物語」の削除を要求する」
(資料7)橘純一「「源氏物語」の小学教育越境」
(資料8)井上赳「国語教材論」
(資料9)井上赳「国定読本の編集」
(資料10)『アサヒ読本』巻七(六年用) 六 源氏物語の(二)
社会科より見た国語科単元学習批判 向山嘉章『カリキュラム中心問題としての単元の研究』  黒川 孝広
発表内容  戦後に成立した社会科は、戦前には一部の学校にはあったが、全国的には教科として存在していなかった。 よって、その存在意義を確立するがために教育内容と教育方法、教科の独自性を至急に検討する必要があった。 地理や歴史以外の要素を取り入れ、そして社会全般の総合的な教科として設立された社会科にとって、教科の独自性確立は、その存在意義をかけ急がれることであった。 その急がれた確立のためには、単元学習の導入が必須であった。 そして、その単元学習と、国民学校時の「郷土の学習」とが融合して社会科が成立したと見るのが妥当である。 CIEの指導の元に昭和22年9月より本格的に導入した社会科の単元学習と、他教科の単元学習を比較することで、単元学習の本質を検討することが出来る。 国語科では戦後数年の後に単元学習の流行が終焉を迎えた。 その理由を考えるには、他教科との違いを考察する必要がある。
 今回、この資料が社会科からの視点で国語科教育を検討しているので、国語科教育の本質を検討するのには適当な文献である。
 本資料からうかがえる問題点を列挙する。
[国語科の独自性]
○社会科から見ると、国語科の内容は、言語事項に徹すればようと考えられやすいこと。
○社会科の独自性を維持するには、国語科の内容と重複する部分についてを整理する必要があること。
○国語科が単語や文というレベルの知識理解だけでないことを説明し、国語科の独自性を一般にも理解させるような方法が今後必要になること。
[国語科の単元学習]
○単元学習の語の内容についての混乱を他教科を含めてより広く考察する必要があること。
○単元学習の混乱や衰退の原因を、国語科の教科構造から検討を加えること。
○国語科の教科構造から見て、向山の分類とは違った国語科独自の単元学習論の分類を設定し、それに当てはめないと矛盾が生じること。
資料目次 はじめに
国語科と他教科の関係
他教科からの検討の必要性
単元学習と国語科
向山嘉章の分析
国語科単元学習批判
第十章 各科の単元論
一、国語の単元学習
T倉沢栄吉氏の場合
U大橋富貴子の説
V小島忠治氏
二、単元の性格
五、単元学習の混乱をどうする
本資料からの問題点

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